2024年以降、Google検索の結果に「AIによる要約」や「AIモード」が登場し、従来のSEO戦略は大きな転換期を迎えています。
その裏側で使われているのが「クエリファンアウト」という技術です。
本記事では、クエリファンアウトの仕組みや役割をわかりやすく解説し、今後のSEOにどのような影響を与えるのか、どのようなWeb戦略が必要になるのかを掘り下げていきます。

AIに引用されやすい情報設計について、必要なSEO施策の方向性と、次に打つべき具体策についてお伝えします。

クエリファンアウト(Query Fan-out)の仕組みと概要

クエリファンアウト(Query Fan-out)とは、ユーザーが入力した検索プロンプトに対して、AIが最適な回答を出すまでに行うプロセスのことです。

クエリファンアウトの概念図

後ほど詳しく解説しますが、クエリファンアウトの流れをわかりやすくすると

  1. AIが質問を受け取る
  2. AIが何人もの専門家に、一斉に質問を問い合わせる
  3. それぞれの専門家が手分けして調査し、結果をAIに報告する
  4. AIは専門家からの情報をまとめて、回答する

という一連のイメージを持ってもらうと、クエリファンアウトのイメージが掴みやすくなります。

ファンアウト(Fan-out)とは「扇状に広がること」

あまり馴染みのない言葉ですが、ファンアウト(Fan-out)とは「扇状に広がる。多くのものに分岐する。」を意味する英語です。
例えば、こちらのような光ケーブルは「ファンアウトコード」と呼ばれています。

クエリ(Query)とは

なお、クエリ(Query)とはAIに投げる「質問」や「命令」のことです。
検索エンジン入力する「キーワード」もクエリの1つです。
SEOの文脈ではクエリ=キーワードと認識されていますが、もともとはデータベースに関連するエンジニア用語でした。
データベースに対して、何らかの指示をする入力文のことをクエリと呼びます。

Google公式動画から見るクエリファンアウトの仕組み

こちらは、Google公式に公開しているクエリファンアウトの仕組みを解説する動画です。

動画の中では、以下のようなAIの動きが見られます。

  1. AIが「ボストンのパブリックガーデンで写真をとるには、いつがいい?」の質問を受け取る
  2. 入力されたクエリに対して、多様なサブトピックを抽出
  3. ウェブ検索結果だけでなく、ナレッジグラフやニュース、ショッピングなど多様なソースから情報収集
  4. 集められた大量の情報から、AIが内容を要約して回答する

1つの質問に対して過程2〜3で多くのトピックに分岐し、調査範囲が扇状に広がっている様子から、クエリファンアウトという名前が付けられるようになりました。

Google公式ページ(検索セントラル)では、AIを使った検索機能(AI ModeとAI Overview)に、このクエリファンアウトが使われていることが明記されています。

クエリファンアウトを使ったGoogleの新機能「AI Mode」

Googleは、クエリファンアウトを使った新機能「AI Mode」をリリースしています。
2025年7月現在はアメリカとインドの一部ユーザーしか利用できないため、日本国内で利用することはできません。
しかし、今後の検索体験における転換点として、世界から注目されています。

日本国内では、既にAIによる概要機能(AI Overview)はリリースされており、誰でも利用することができます。

AI Modeと、これまでのAIによる概要機能(AI Overview)との違いについて、
Google公式のホワイトペーパー「AI Overviews and AI Mode in Search」から、わかっていることをまとめました。

AIモードとAI Overviewsの主な違い

  AI Mode AI Overviews
役割 深掘りの調査や比較検討 概要をすぐに把握
入力方法 マルチモーダル
(音声、テキスト、画像など)
テキストのみ
(検索KWのみ)
回答結果 テキスト+リンク
(将来的には画像、動画)
テキスト+リンク
これまでの
質問内容
引き継ぐ 引き継がない
クエリファンアウト
技術
使っている 使っている
入力元データ Web検索結果
ナレッジグラフ
GoogleMapデータ
Googleショッピング
など
Web検索結果
ナレッジグラフ
GoogleMapデータ
Googleショッピング
など

AI Overviewsの役割は「概要の即時把握」になります。
1問1答のような形で、パッと答えが知りたいような時に便利です。

一方でAI Modeは、簡単に答えが出せない、人や状況によって最適解が変わるような質問に回答することができます。
例えば、「5人家族で米国で休暇を過ごすならどこが良いか?」などの質問に対して、回答を出すことができます。

これまではKWを複数回入力して検索していたようなことも、AI Modeなら1発で回答できる可能性があります。
AI Modeの登場によって、大きく検索行動が変わることが予想されています。

テキストだけじゃない、マルチモーダルな入出力が可能に

AIの世界では、データの種類のことを「モーダル(Modal)」と呼びます。
テキスト、画像、音声、動画など、複数の種類のデータを処理できるAIのことをマルチモーダルAIと呼びます。

AI Overviewsでは、回答結果は基本的にテキストのみでした。
しかしAI Modeでは、画像や音声、動画も出力されるようになると発表されています。
(将来的な指針なので、現在実装されているわけでありません。)

参考:Google 検索の Google AI エクスペリエンスでコンテンツのパフォーマンスを高めるための主な方法  |  Google 検索セントラル ブログ

いずれもクエリファンアウトは使われている

AI OverviewsでもAI Modeでも、背後ではクエリファンアウトを使った処理が働いています。
ただし全ての検索でクエリファンアウトが使用されるわけではなく、ウェブ上に信頼できるデータが少ない場合など、データ不足なKWではAI Overviewsは表示されない場合があります。
参考:「AI Overviews and AI Mode in Search」 .p4 Addressing data voids より 

YMYL領域では引き続き情報ソースの信頼性を重視

AIの回答結果に対してはGoogleもかなり慎重な姿勢をとっており、ハルシネーション(Hallucination:AIが生成するでたらめな結果)を起こさないように取り組んでいます。
特に、YMYL(Your Money or Your Life)と呼ばれる重要な検索では、信頼性の高い情報ソースからしか引用しない仕組みが導入されています。

参考:「AI Overviews and AI Mode in Search」 .p3 Corroborating web results より 

ユーザー行動の変化と今後のSEOで目指すべき方向

AI Modeの登場と国内での普及によって、マーケティング業界、特にSEOで大きな方向転換が必要になると予想されています。

「ゼロクリック問題」とは

AIが検索結果でユーザーの質問に答えてしまうため、これまでのように検索1位のサイトをクリックしてページを閲覧する必要がなくなります。
このような「ゼロクリック検索」が増加すると、サイトへの流入が減るので、企業にとってはユーザーとの接触が減ります。
キーワードによってはこの動きが顕著に見られ、「ゼロクリック問題」として、SEOの費用対効果が悪化する要因になっています。

新たな焦点は「AI回答で引用されるかどうか」

これまでのSEOでは、自社の商品やサービスとユーザーの接点を持つために、「検索で1位を目指す」が最初の目標でした。
クエリファンアウトが導入されたAI Modeの世界では、様々な関連クエリで「情報源として参照されること」が重要になります。

今後は、検索のクリック数よりも

  • AIで引用された回数
  • AI経由でサイトに訪れたユーザー数

が重要なKPIになるかもしれません。

AI経由のユーザーと検索経由のユーザーの違い

ゼロクリック問題によって、今後もおそらくサイトのクリック数は減少の一途を辿ることが想定されます。
ただ、今後は検索結果でのクリック数は、あまり重要でない指標になるかもしれません。
なぜなら、AIからの流入してきたユーザーは、「より質の高いユーザー」であると言えるからです。

AI経由でサイトに訪れたユーザーは、一度AIとの対話を終えて、比較検討が済んでいることが予想されます。
まだ情報収集中のユーザーよりも、AIとの比較検討を終えて訪問したユーザーの方が、より商品やサービスへの関心は高いと言えます。

AI版のサーチコンソールはまだ存在しない

Googleの検索結果からクリックされた回数は、Googleサーチコンソールから確認できます。
また、bing検索の場合もbing webmaster toolsから確認できます。

検索プラットフォームが検索エンジンからAIにシフトした場合、AIでの引用数(表示回数やクリック数)が重要になります。
しかし現時点で、ChatGPTやGeminiなど主要なAIプラットフォームでは、自社ドメインの引用数を計測できるツールは公開されていません。

AI時代に必要になるSEO対策

検索プラットフォームが検索エンジンからAIになる場合、AI版のSEO対策(GEO、LLMO、AIOなど)はどうすれば良いのでしょうか?

基本的なSEOは引き続き重要となる

Google公式ドキュメントでは、「これまでのSEOの基本は引き続き重要」と述べています。

SEOのベストプラクティス(日本語訳)
AIによる概要とAIモードのための特別な最適化を行う必要はありませんが、次のようなこれまでのSEOの基本は引き続き重要となります。
・クロールがrobots.txtに加え、CDNまたはホスティングインフラストラクチャで許可されていることを確認します。
・コンテンツがウェブサイトの内部リンクから簡単に見つけられるようにします。
・ユーザーにとって優れたページエクスペリエンスを提供します。
・重要なコンテンツはテキスト形式で提示します。
・可能な場合は、高品質の画像と動画でテキストのコンテンツをサポートします。
・構造化データをページに表示されるテキストと一致させます。
・Merchant Centerとビジネスプロフィールの情報が最新のものであることを確認します。
AI機能で表示されるために、新たにコンピュータが解読可能なファイルや AIテキストファイル、マークアップを作成する必要はありません。また、特別なschema.orgの構造化データを追加する必要もありません。

要約すると、「検索エンジンがデータを読み取れる状態にしておけば、AI版のSEO対策としては十分」というメッセージだと言えます。

追加で推奨されるSEO施策

以降は筆者の考えとなり、推測となります。

AI検索時代のSEOでは、

  • EEATの重要性がさらに高まる
  • AIに拾われやすいコンテンツ目指す必要がある
  • 情報の網羅性がさらに重要になる

となることが予想されます。

EEATの重要性が高まるので、参考にされやすいサイトへの掲載を狙う

GoogleがYMYL領域では特にサイトの信頼性を重視するように、AIも情報ソースの信頼性はかなり重視しています。
AIに引用されるためには、まず自社のサービスや商品の情報を「信頼性の高い情報ソース」の中に入れる必要があります。

AIがどのような情報ソースを「信頼性が高い」を認識しているか不明ですが、参考にしているサイトを知る手掛かりとして、AIに「参照元はどこですか?」と聞いてみることは有効です。

  1. 自社のサービスや商品の情報について、AIに知っていることを出してもらう
  2. 参考にしたサイトを聞く

というプロセスを繰り返すことで、AIが参考にしているサイトの傾向が掴めるはずです。

参考サイトの目星がついたら、自社サービスや商品の情報を掲載してもらえるように、営業活動をしてみましょう。

サイト内データをAIに拾われやすいように整理する

検索エンジン向けのSEOと同じ施策になりますが、AIのbotが、サイトの情報を拾いやすいように整備しておくことは重要です。

  • 見出し構成(h2〜h4タグ)は細かく分ける。
  • 文章は短く区切る
  • 画像だけではなくテキストデータも用意する
  • 構造化データを挿入する

など、Google botのクロールを改善する施策は、引き続き重要となります。

網羅的にコンテンツを用意し、内部リンクでつなげる

トピッククラスターの概念図

クエリファンアウトによって、AIは1つのトピック(検索意図)に対して、さらに深堀りしたトピックを情報収集できるようになります。
扇状に広がるトピックに対して、多くのトピックで自社サイトの情報を参照させることができれば、結果として引用される確率も高まるはずです。

  1. 検索者の気持ちやシチュエーションなど、ユーザーの検索意図を深く洞察する
  2. ユーザーが必要とする可能性があるコンテンツは全て用意しておく
  3. 各コンテンツ同士をリンクして、トピッククラスターを形成する

このように網羅的に準備をしておくことで、クエリファンアウトのような検索が実行された場合でも、AIが自社サイトを情報ソースとして選んでもらえる確率が高くなります。
結果としてAIの最終的な回答にも掲載されやすく、ユーザーとの接点を持ちやすくなります。

AI時代のSEO基盤として、ヘッドレスCMSという選択肢を

AI検索時代においては、「コンテンツの質」だけでなく、「情報構造の設計」がますます重要になっています。
クエリファンアウトのようにAIが情報を扇状に広く探索する仕組みでは、どれだけ整理された構造で情報を提供しているかが、引用されるかどうかの分かれ目になります。

そうした構造的な強さを実現できるのが、ヘッドレスCMSです。

  • サイト構造や出力先を自由に設計できるため、SEOやAI最適化に強い情報設計が可能
  • マルチチャネル(Web・アプリ・音声AIなど)対応に優れ、あらゆる接点にコンテンツを展開可能
  • 表示速度やセキュリティ、運用効率にも優れた、次世代型のCMS

このように、AIに引用される「情報の土台」を整えるには、従来型のCMSでは限界があります。
今後のSEO対策や情報配信の在り方を見直すなら、基盤となるCMSから変えていくことが効果的です。

クエリファンアウトに対応できる情報基盤を、今のうちから
私たちが提供するヘッドレスCMS「BERYL」は、こうした変化に備えるための選択肢の一つです。

BERYL公式サイト

今後ますます高度化するAI検索の世界に向けて、構造的に「引用されるWebサイト」を目指すなら、土台から見直すタイミングかもしれません。

▶ 詳しくはこちら → https://www.beryl-cms.jp/

この記事を書いた人
BERYL
BERYL編集部
「BERYL編集部」は、Web制作、CMS関連、Webマーケティング、コンテンツマーケティング、オウンドメディアなど、多岐にわたる分野で専門的な記事を制作しています。デジタル領域における最新の技術動向や実践的な事例を通じて、マーケティング戦略を強化するための情報を発信いたします。 また、SEO対策やコンテンツの最適化にも注力。ユーザー目線でわかりやすく解説し、企業のマーケティング活動やコンテンツ運営をサポートします。